good-bye,my blue sanity
good-bye,my blue sanity
「ねえ、知ってる?」
シャンパンのグラスを灯りに透かす様に掲げ、薄い硝子の中の海でぱちぱちと弾ける泡を見つめながら、ブルマが呟いた。
言葉に釣られてベジータの視線が動く。
シャンパングラス越しに、二人の男女の目が合った。
黄金色の液体を通して見る女の青い瞳は、普段とは違うものを秘めている様に思えた。
ゆらゆらと妙に歪んで、くすんだブルー。
「……何をだ」
「‘crazy for you’って言葉よ。直訳すれば、‘あなたに狂ってる’ってとこかしらね」
「知らんな」
「ま、そうでしょうね」
最初から気の利いた返事など期待していなかったのか、ベジータの素っ気ない言葉にブルマは小さく笑ってグラスを呷った。
甘い香気のアルコールは一息に飲み干され、ブルマの体に溶け込む。
白い頬が、ふっと柔らかな赤に染まった。
「あんたも飲む?」
差し出されたグラスをベジータは首を横に振って断り、あらそう、とブルマはそのまま話を続けた。
「あの言葉、『あなたに恋してる』って意味なの。普通に訳せば狂ってるってことなのにね。面白いと思わない?」
「さあな」
「はぁ……あたしとしたことが、なーんでこんなデリカシーのないオトコに惚れたのかしら」
憎まれ口を叩きながらも、やはりブルマは笑っていた。
少し酔いが回ったのか、かなり上機嫌なようだ。
「でもね、ベジータはそれでいいわ。うん、じゃあこの話はおしまい」
一人でそう締め括るとブルマはまた残りのシャンパンを飲み干し、グラスにキスをしたその唇をベジータに重ねた。
そしてそのまま、二人で白いシーツの上に倒れ込む。
「恋することが狂うことなら、きっとあたしも狂ってるんだわ」
耳に届いた小さな呟きに、あの歪んだブルーが蘇った。
2008.October.20 up
拍手より再録です。なかなか完成せず2,3ヶ月は悩みながら書きました。
でも結局微妙な出来ですね…。ほんとにDBは難しいです。
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